私記

往復書簡|アメリカから日本へ①

その他

ジョーゼフ・キャンベル 神話 新型コロナウイルス 東京オリンピック2021 matrix

神話学者ジョセフ・キャンベルの遺志を継ぐ人たちに

 

由井さん

 

おかげさまで元気にやっておりますが、これを書いている最中にデルタ新株でアメリカは大騒ぎになっており、ワクチン接種者も感染を広げる可能性があるのでマスクせよとか混乱を招く様な指示も出ています。その中で南部の国境から信じられない数の違法移民が流れ込んでおり、彼らの中でデルタ新株が感染拡大しておりさらなる混乱を極めております。

そんな中での東京オリンピックなので米国内ではあまり盛り上がっておりません。特に米国版文化大革命とも言えるキャンセル・カルチャー運動のせいでアメリカ国旗を掲げての競技参加自体に対する疑問も上がっており国威をかけてのスポーツということ自体に対するアンチテーゼが高まっていることも影響していると思います。

 

さて、ジョセフ・キャンベルについてですがはっきりとした関係は不明なのですが彼の影響を受けたと言われているウォシャウスキー兄弟(現在は姉妹)の映画「マトリックス」について書いてみたいと思います。前世紀の最後に観たこの映画で私は自分がなぜ日本を出てアメリカに来なければならなかったのかがはっきりと理解できたのです。

 

幼少時からこの世の仕組みを知りたいという欲求が強かったので、社会から宇宙までその仕組みついて考えていました。特に宇宙の果てがどうなっているのかを考えると自分の存在自体が不確定なものに感じて眠れない夜を過ごしたのを覚えています。

 

自分がいる環境がどうも何かある目的を持って作られたものではないのかという感覚に囚われて本当の現実はその環境の外にあるのではないかという思いが募り、どうしても海外に出て外の世界を見るために社会に出てわずか一年でアメリカに渡ったのです。
私にとって日本の環境はまさにマトリックスそのものだったのです。

 

1985年3月31日、一年半前にソ連によって撃墜されたのと同じ大韓航空の007便が20時間のフライトの末にニューヨークJFKに無事到着したときはすでに真っ暗で小雨が降っていました。明らかに精神に異常をきたしている運転手のタクシーがNY在住の友人に紹介されたミッドタウンのアパートに行くまでの間、街路の雨で濡れた道路に反射する橙色のナトリウムランプが何とも異様な雰囲気でそれはまさにマトリックスの外の世界でした。

 

翌日、目を覚ましたニューヨークは生き馬の目を抜くという言葉では表現できないくらい厳しい現実の世界でした。街から受けるエネルギーがとても大きく最初は1時間くらいでヘトヘトに疲れてしまうほどでした。特に私がお世話になったアパートのあるヘルズキッチンは当時のマンハッタンでも有数の無法地域で近くの酒屋に行くにも決死の覚悟が必要なほど危険と隣り合わせの生活でしたが、私にとっては仕組まれた環境からの開放され新しい人生が始まったように感じられました。

 

その後、仕事を見つけ隣のニュージャージーに移り家庭を持った今も日本のマトリックスの世界を外側から見ておりますが、最近はその日本のマトリックスの世界もかなり壊れかかってきているようで中にいる皆さんもそろそろ赤いピルを飲む時期が迫っているようです。それは戦後日本の社会のマトリックスを作ったアメリカ自体が消滅しつつあるためで、世界はこれから大混乱の時代に入り偉大なるリセットが訪れます。その時に現れる英雄が誰なのかはまだわかりませんが、ジョセフ・キャンベルが解析した神話に現れる様な救世主が神無き世を彷徨う我々人類を宇宙と結びつけてくれる日が訪れるのを待ちたいと思います。
これからさらに激動のパラダイムシフトが起こりますが、神話的な時代の幸運な目撃者として「ものがたりをめぐる物語」の公開を楽しみしております。

 

小倉弘之

2021年8月4日 米国ニュージャージーにて

2021/08/06

コメント(1件)

Hiroさんの投稿