令和2年4月7日に、政府より緊急事態宣言が全国に発出され、地元の神奈川県では5月31日まで延長されています。5月14日に宣言が解除された地域も多くありますが、依然としてみんなが多かれ少なかれ不安な日々を過ごしています。
私は、「一枚の畑」と名付けた畑で毎日、野菜を作っています。
確か昨年の11月だったと思いますが、サヤエンドウやスナップエンドウのタネを蒔きました。わずか30、40粒のタネが、雑草よりたくましく芽を出し、茎を太くし、蔓を伸ばして支えをしっかり掴み、一斉に花を咲かせ、沢山の実りをつける姿を見ているうちに、気持ちが穏やかになっていくことに気づきました。おそらく、私も町も「お籠り」を強いられる状態であるがゆえにいっそう、日々着実に命が育っていく姿を見て安心したのではないかと思います。そういう意味においても「今、畑に立つ」喜びを感じています。
あまりにも大豊作であったため、自分たちでは食べきれず、顔見知りのご近所に配ることにしました。こういうご時世ですから直接会うことはせず、玄関先に置いたりドアのフックにかけて置いたりしました。しばらくすると、私たちの玄関にもいろんなものが置いてあることに気づきました。
綺麗な刺繍が付いた手縫いの巾着やマスク、自家製天然酵母のパン、玉ねぎや山椒の実、ラベンダーなどのハーブ類などなど...
共通しているのは、自分が作ったり育てたりしてきたものであること。そこに温もりを感じますし、気持ちが通うものがあります。玄関に野菜などが置いてある姿を見るにつけ、「この光景はどこかで見たことがあるな」と思いつつ、心の中に引っかかったまま思い起こせないでいました。その後フラッシュバックのように何度もその「映像」が蘇ってきたのですがわからないままでいました。それをずっともどかしく思っていたのです。
ある日、「ああ、そうだ。これは笠地蔵だな」と思い当たりました。子供の頃に読んだ、「ものがたり」だと。
雪の中お地蔵さんが列をなして、宝物を沢山載せれたソリ(ソリだったような記憶が)を引き、おじいさんとおばあさんの玄関口に置いていく姿を忘れられないでいたのだと思います。
身近なところで、今、笠地蔵さんが増えています!
もりした かずこ
ヨーロッパ イギリス、ハートフォードシャー
2020/05/23
手作りのお裾分けが行き来する様子を想像して、素敵だなと思いました。
『かさじぞう』は、私も子供達からリクエストされる絵本の一つです。おじいさんが自分の笠までお地蔵さんにあげて手ぶらで帰ってきたのに、おばあさんが「そうか、そうか。かさをもってきたって、こんやのたしには ならないもの。おじぞうさまに あげてよかったな。そだらば、つけものででも としをとるべ」というセリフがあるのですが、そこにも愛情があっていいなぁと心があたたかくなります。
優しい心遣いは、今の世の中に必要ですね。