『土曜日の会』第5話のゲストは、哲学者の内山節さんです。内山さんから頂いた下記のレジュメを元に話の流れに任せてトークセッションを展開しました。この時期に内山さんのお話を直接伺えたのは、私にとってかけがえの無い体験になり、土曜日の会としても貴重な記録になったと思っています。内山さんのお話を皆さんと共有できれば嬉しいです。
「私たちは今の社会から一歩踏み出すことができるのでしょうか?」という問いかけに対し、きっと内山さんは「特に若い人たちの中にはすでに一歩踏み出している人がいる」とお応えになるような気がします。トークセッションを交わしながら、内山さんは私の問いに対して答えるのではなく(むしろ、応えながら)、すでに現実の世の中で湧き起こっていることを見逃さず捉えていくことの大切さを話してくれたように受け留めています。(由井)
ゲスト:内山節|哲学者
聞き手:由井英|映画作家、土曜日の会メンバー
撮影:宮澤信也、ニホンマツ アキヒコ
SWC+LIVE配信:内田英恵
アシスタント:松田理沙|藤本ゼミ(明治大学 大学院生)
制作・著作:土曜日の会/ささらプロダクション
共催・会場:珈琲&レストラン アンジュ
開催日:2025.4.5. Sat.
「もの」の哲学を考える
1、はじめに
―「もの」はどこから生まれたのか
2、西洋思想と「もの」についての発想
―基本的な物質の組み合わせからつくられたという考え方
―初期のギリシア哲学では火、土、水からすべてのものはつくられたなど
―おおもとの物質は原子と考えた原子論派・・・たとえばデモクリトスなどの発想
―いまでも科学はおおもとの物質を探している・・・素粒子、クオーク
3、インドに生まれた大乗仏教はこの問題をどう考えたか
―すべてのものは関係からつくられているという視点
―我をつくりだしているものは全宇宙的関係とした龍樹の空の思想
―人間の奥にも全宇宙的関係によってつくられた深層の意識=阿頼耶識があるとした世親
の唯識思想
―個々の実態と思われているものは関係からつくられた現象にすぎないとする視点
4、日本の伝統思想と自然信仰について
―自然(しぜん)と自然(じねん)
―自然(じねん)の関係が自然(しぜん)をつくりだしているという視点
―自然(じねん)の関係に清浄な世界=神、仏の世界を見る
―人間は自然(じねん)の関係だけで生きていないがゆえにさまざまな問題を起こすだけで
はなく、我欲を抱くことによって自分自身も苦悩するという視点
―日本の自然(しぜん)信仰もまた関係本質論
―ゆえに民衆のなかに大乗仏教が浸透した
5、日本の「もの」づくりの精神について
―たとえば家を建てるとすると
・・・自然との関係からつくられてくるさまざまな素材
・・・建て主との関係、多様な職人との関係などから家という「もの」が生まれてくる
―自然との関係を見る、人々との関係を見る
―清浄な関係を実現させるための技
6、「もの」とは物質のことなのか
―関係から「もの」が生まれるのなら、「もの」は物質、非物質を問わない
―関係から生まれた物語、この世界のゆがんだ関係から生まれた物の怪
7、西洋思想と物質本質論、東洋に生まれた関係本質論
―その違いを踏まえながら
8、まとめに代えて
―関係論の視点から「もの」を考える