地域 神奈川県川崎市高津区

【2025/4/5】土曜日の会

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物語・伝説

令和(2019〜)

第5回の「土曜日の会」のゲストは内山節さん。今日を待っていたかのように、レストラン「&you(アンジュ)」の桜が花開いている。

 

 テーマは「もの」の哲学。
 ものづくりの「もの」とは何か?という問いを囲んで、聞き手との間で繰り広げられるやり取りは心地よく、聴衆と一体感を共有していった。そうしているうちに、曼荼羅の世界に私たちは引き込まれていく。東洋思想と西洋思想の起源に触れながら、私たちの根源にある「本能(のようなもの)」について語りは拡がっていった。

 

 私の解釈に任せれば、「もの」は関係性の結節点であることが理解された。ひとつの「もの」の背景にある様々な「もの」との関係。網の目状に絡みあう関係性のうち、「もの」は関係をつなぎ留める自在な点である。「もの」を通してつながる関係は、見えない世界とも確実につながっているはずだ。とするならば、見えない世界に接続されている関係性への「想像力」はどう考えられるのだろうか。と疑問に思っていた。

 

 この私の疑問に応えるように、第2部での参加者からのある質問が印象に残っている。福祉の世界からみた「人権」をどう考えればよいのか。弱者とカテゴライズされる人々がどうやって尊厳をもって生きられるのかという問いかけだった。自身の経験を、簡潔に問いに落とし込んで、しかしそこにある熱はそのまま残した発言だった。

 

 それに対する内山さんの回答も私をうならせる。「みんなして『良かれ』と思ってきたものにぶつかっている現代という時代の中では、自分を大切にしすぎるがゆえに、大事にされない自分を発見してしまう。その時、個人の『権利』というものが侵害されているように思えてくる。しかし、考えてみれば社会というものは自然と人間(生も死も問わない)が相互に影響し合ってできたものであって、個という単位はそれほどまでに重要ではないかもしれない。」ということに私は気が付く。個という単位から離れて考えてみると、自分らしさとか、アイデンティティとか、もっと言えば自己実現といったことは急に熱冷めたものになる。尊ぶ、敬う、そういう気持ちは、自己実現欲求からは離れている気がする。誰かをケアする、自分をケアするというのは単に「個に優しくする」ことでは説明がつかなくなる。個別性を超越する関係性のかたまりへ挑戦することになろう。きっとその時には「想像力」が助けになるのだというところまでは整理がついた。

 

 それでもまだ、見えない世界への「想像力」にはたどり着けなかった。見える世界でさえも、想像しきれないことが山ほどある。じっくりと誰かと一緒に考えていこうと思った。

 

 「土曜日の会」が少しづつ、誰かを信頼して生きることに自信をもてるような場になっていくような希望を感じるあたたかな春の日だった。

写真

地域に根付くレストラン
益子さんのコメントが料理をさらに引き立てる
アンジュのテラスを見守る桜
ここに根を張る桜の木はお店とともに成長していく
2025/04/07

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藤本ゼミさんの投稿