今日は川崎市宮前区の「一枚の畑」を飛び越えて、さらに「もう一枚の畑」にもお邪魔した話を記録したい。それぞれが持っている「一枚の畑」を繋げていくとどんな景色になるのだろうか、と小さく考え始めている。シリーズ化できるかそうでないかは、今後の我々の偶然性と必然性にかかっている。
場所は、東京都多摩市。多摩ニュータウンの一角に、森林ボランティアの方が管理されている「よこやまの道」という自然豊かな遊歩道がある。畑はここのすぐ隣。
すぐに目的地に行けると思ったら大間違いで、まずは多摩市の「諏訪」地区を通る。私が寄り道を紹介するのは、気になることがあるからだ。諏訪地区には「諏訪」神社があるという。おぉあった。でもなぜここに「諏訪」?長野県「諏訪大社」となにか関係がありそうだ。どなたか知っている方コメントください。
インターネットに頼ってみるとやはり諏訪大社を奉斎したものであるらしい。そしてかつての連光寺村字馬引澤の鎮守だったんだとか。(そういえば「馬引澤」という地名を見た)
ここ多摩の地域ではなだらかな丘と丘の間の谷で地名が切り替わっていた。
この神社の位置の隣を小川が流れる。そして下っていくと、「乞田川(こったがわ)」という大きな川と合流する。川に沿って暮らしが成り立ち、支流付近は、やはり鎮守の社を構える重要な場所だったのだろうか、と、勝手な妄想を繰り広げてみる。
多摩の土地の面白さは、戦後の宅地開発と共にあると思う。
社会実験とも呼べるほど、大規模な開発がこの土地に人を呼んだ。そして傍らに残る自然の中には更新性があって、それに合わせるようにか、住宅も壊されてはまた新しい住宅が建つ。否、自然は、人間の開発速度なんか気にも留めずゆっくり雄大に今も移り変わっている。
ようやく、畑に到着。
ここは、間借りの畑スペースで、2×2mを1区画として多くの人が畑を楽しんでいた。面白いのは、セルフビルドの小屋や休憩スペース、物置小屋があり、道具を共有している点だ。ここは水が通っていないから、雨水を溜めて活用しているらしい。それぞれが「一枚の畑」を手入れしながらも、人間同士の交差点があるのがグッとくる。
今回耕す一枚の畑は、「菌ちゃん農法」を採用している。すでに土づくりは夏の間に終えているようで、その畝は古墳のようなこんもり山である。黒いマルチの下には有機堆肥が隠れている。この中で土と有機物が入り混じり、栄養を蓄えることができるらしい。しかも一度立てた畝は有機物を補充してずーっと使うという。
今日は「菌ちゃん農法ダイジェストBOOK」を頼りに種を蒔く。あらかじめひと言付言したいのは、「かなり適当!」ということ。畑は手入れをする者の性格さえも表してしまうのだ!
とりあえず、黒マルチにカッターで切り込みを入れる。多分この野菜はこれくらいの間隔がいいのだろうと予想して、あとは手で破って穴を広げる。穴の真下の土をグ―パンチで押し固める。(これのおかげで覆土し活着させる必要がないらしい)そこに種を2,3粒蒔く。はい完成!播種後、種がむき出しなのは驚きだ。自然に周りの土が崩れてくるのを待つらしい。
今回は在来種の宮重大根・ラディッシュ、にんじん、ほうれん草、その他いろいろ(静岡県浜松市のはぐみな保育園のシードバンクからいただいたも)を播種した。「その他いろいろ」というのは、保存袋の中で種が混ざってどれがなんの種か分からなくなってしまったからだ。芽が出たら何か分かるといったところだ。(適当だけどそれが楽しい)
今日1番驚いたのは種のこと。なんとにんじんとほうれん草の種がカラフルである!にんじんの種は青くキラキラと光っているし、ほうれん草の種は鮮やかな緑色だ。ムムム・・・。どう考えても人工的である。表示をよく見ると、「チウラム/キャプタン各1回処理済み」と書いてある。アメリカからやってきたその種にはおそらく何かが施されている。怖くて調べられないが、これが噂の消毒ってやつか!あまりに土に馴染まないそのカラーを”個性”と呼ぶには少し抵抗がある。発芽するのかが一番の関心だ。
わちゃわちゃ作業していると、斜め向かいで畑を手入れしていた男性が「ニラいるか?」と声をかけてくださった。畑からニラをくれる。我々の畝の斜面に、いただいたニラを植えた(命名「シャメニラ」)が、土が馴染んでいないのかシュンと首をもたげている。確かにさっきまで住んでいた家から強制的に引っ越しさせられたら、いくらニラでも元気がなくなるだろう。この土がいい土であるかは、今後のニラの適応にもかかっている。もしかしたら元の家の方がよいかもしれない。
最後に大きくなれよと願いを込めて水をやった。
これは多摩の「一枚の畑」の話。
(文:松田理沙)
由井 英
川崎市宮前区
2024/10/24
理沙さん
こんもりとした畝には、どのような有機堆肥が乗せられているのでしょうか。結構な量ですよね。
グーパンチで固めて、播種し、人間が覆土をせず、周りの土や堆肥が自然と落ちてくるのに任せるというのは面白いですね。発芽したあと徒長しないかどうか心配しますが、きっとそんなことはないのでしょうね。
どのように成長していくのか、今後の投稿を楽しみにお待ちします。