『諏訪式。』<亜紀書房刊>で、山国の信州諏訪から江戸(東京)大森に出稼ぎに出て、独自の商いを確立した「諏訪の海苔商人」について紹介したご縁から、今特別展の講師にお招きいただきました。
大森、品川、川崎、横浜、さらには千葉につながる東京湾は、「江戸前」の漁場であり、「海苔」の一大養殖場としても名を馳せてきました。
今年は大森の海苔漁師が一斉に漁業権を返上して60年。特別展「海苔商たちの底力」は、この機を捉えて企画されました。
江戸(東京)湾が豊かな漁場であり、海苔の養殖場であった理由は
1.多摩川、荒川といった川が山から栄養豊富な土砂を運び、堆積したこと。
2.内湾で遠浅の海であること
3.冬も温暖で晴天が続くこと
4.海水に川から真水が注ぐことで「汽水域」が保たれていること
『オオカミの護符』の取材で、川崎の海苔漁師だった池上茂一さんがこの四つを教えてくれました。冬も温暖な南関東は、寒冷地からの「出稼ぎ衆」を受け入れてきた歴史もあり、大森の海苔問屋には、信州諏訪から大勢の働き手がやって来ました。諏訪から働き手が輩出されてきた背景に触れながら、「南関東」の風土と人の暮らしが紡ぎ出してきたものを見つめていきます。
さらには、南関東(南武蔵)が首都圏へと変貌していくターニングポイントといわれる昭和30年代から、今回も「アスファルトの〝下〟と〝上〟をつなぐ」試みをして参ります。
大田区立郷土博物館 特別展『海苔商たちの底力』
・日時:10月28日(土) 14:00~16:00
・テーマ: 幻燈がたり 『川崎、大森、そして諏訪。~海苔をめぐる旅』
・会場:大田区立郷土博物館 2階会議室
・定員:40名
9月21日(木曜日)から郷土博物館にて電話受付開始
TEL:03-3777-1070