この夏、私は娘2人と4年ぶりに日本で過ごしました。
4年という歳月は思いの外長く、パンデミックで仕方がなかったものの
実際には、家族や気心の知れた友人たち、そして日本の文化
から遠ざかってしまうことは、容易ではありませんでした。
私の実家は東京世田谷にありますが、子供の頃は千葉と岩手の大自然の中で生まれ育った
両親のおかげで、学校の休みのたびに田舎で遊ぶ機会がありました。
イギリスでも自然の多い地に引っ越しをしてからは、若いときには当たり前だった
都会の街が、なんだか忙しすぎるように感じるようになりました。
日本に滞在中、長年の友人の誘いで長野県にも行く機会がありました。
ちょうど、『ものがたりをめぐる物語』の2作を観終わり、余韻に浸っていたところでした。
東京を出発し、長野県に向かって車を走らせるうちに見えてきたのが大きく連なる山々。
英国のイングランドの大部分の土地は丘陵地と平坦な陸地で、このように山に囲まれた光景は
観ることができません。青々とした木が生い茂る大きな山のふもとに涼しげな田んぼが見え、
山と人の暮らしが同時に見えてきました。壮大な山が身近にある地域で生活を送っている人々は、
都会で育った私には見えていない世界観があるに違いない。自然の恐ろしさも美しさも
知りながら、自然に対して謙虚な気持ちで生活を送っているのではないかなどと想像しながら
車は霧ヶ峰を登っていきました。
到着した霧ヶ峰は息を飲むほど美しい場所でした。
蝉の声が聴こえず、カエルの鳴き声や鳥のさえずりが聞こえます。
湿原には、人間が足を踏み入れない、ありのままの自然が見えました。
6歳と9歳の娘たちは、何をどれだけ感じたかわかりませんし、
なぜ自分たちがここに連れてこられたのかよくわかっていない様子でしたが、
彼女たちが大きくなった時に、この地を訪れた記憶が心の隅に残っていればと思っています。
霧ヶ峰では三井さんご家族が経営するヒュッテみさやまの外のテーブルで、美しい光景を見ながら
おいしいアイスコーヒーをいただきました。
帰りの車中、疲れ切った子供たちがぐっすり眠っている時、
私は暗くなった空に黒々とそびえ立つ山々を眺めていました。
なんて大きな存在なんだろう・・
若いころ登山をする機会は沢山あり、その時はこの山のある風景をそんなに珍しいと思って見ていませんでしたが、山の無い地に長く住んでいたせいか、この風景を眺めるのは言葉に表せない圧倒された気持ちになりました。
次に日本に帰って来る時は、自然に囲まれた美しい地域をもっと訪ねたいと思っています。
もりした かずこ
ヨーロッパ イギリス、ハートフォードシャー
2023/08/29
三井さん、コメントをありがとうございます。子供たちのリンゴジュースも、アイスコーヒーもとてもおいしくいただきました。自然音しか聞こえない静かな霧ヶ峰は、本当に特別の空間に思えました。季節ごとに変わる風景の美しさを想像しています。
”いつも暮らしていると当たり前になってしまう風景”の意味もよくわかる気がします。私自身もイギリスの生活が長くなり、遊びに来られた方の言葉に改めて気づかされることが多々あります。いつの日か、ヒュッテみさやまに滞在して霧ヶ峰をゆっくり散策してみたいです。その日が来ることを、今から楽しみにしています。