大阪市の中心部を南北に貫く上町台地上、道頓堀や心斎橋筋などの繁華街からもそれほど遠くない丘の上に「高津宮(こうづぐう)」と呼ばれる神社があります。創建は平安時代にさかのぼり(大坂城築城時に現在地に移転)、主祭神は仁徳天皇。江戸時代には大坂のまちを一望できる観光スポットとしても大いに愛され、落語「崇徳院」や「高津の富」の舞台にもなり、「東海道中膝栗毛」でも紹介されています。かつては名水の湧く井戸があったことでも知られていたのですが、地下鉄工事の影響などで枯れて久しく、井戸の再興は現・小谷真功宮司の長年の夢だったそうです。
境内に伝説の井戸を復活させようと、数年前から境内で「あきんど祭り」を開いている大阪の会社経営者の方々が中心となって、昨年井戸再興プロジェクトを立ち上げられました。
さて、ここからがなかなか面白いのです。丘の上の井戸ということで、14メートルほど掘らなければならないところ、機械で掘ればあっという間かもしれませんがお金がうんとかかります。人力で掘れば時間がかかりますが、その分人の知恵がうんと集まり、人の縁がうんと広がります。伝統的な「上総掘」を中心メンバーの方が研究され、高津宮用に改良して人力で根気強く掘り進めらています。これが素晴らしいのです。休日にボランティアで子どもからお年寄りまで、お参りついでの家族も孤独な散歩人も、いろいろな人が力を合わせて、少しずつ少しずつ。私もたまたま先週取材でおじゃまして30分ほど綱を引かせてもらいました。目下、10メートルを少し超えたところ、お花見のころの完成が目標とのことです。
知らない者どうしが井戸掘りの綱を引っ張り、晴れ晴れとした表情を浮かべる様子を見るにつけ、井戸掘りのご利益を、目の当たりにする思いでした。
実は、この井戸掘りにおじゃました数日前、もう一つ同じ大阪市内に誕生した井戸の取材にもうかがったところでした。西成区の釜ヶ崎と呼ばれてきた地域で、昨年釜ヶ崎芸術大学・大学院の授業の一環で、元建設現場で腕をふるってきたおじさんたちが先生として大活躍して「ゲストハウストとカフェと庭 ココルーム」の庭に、手掘りの井戸が誕生しています。こちらの情報もまた改めてご報告させていただきます。
地域 大阪府大阪市中央区
Yukari
大阪市中央区
2020/02/12
コメントありがとうございます。
昔々の大阪は上町台地が細長い半島状に海に突き出して、東西に海がありました。奈良との境にそびえる生駒山あたりからの伏流水が、上町台地の崖沿いに湧いて出て名水とされてきたようです。
海に向かって拓かれていった大阪の平地の多くは、埋め立てて生み出されていった土地で、海運・舟運によって栄えた「水の都」です。そんな履歴のため、低地の井戸の水質が悪かった分、上町台地や淀川の水が重宝されたようです。
谷戸の下の井戸も、いつか実現するといいですね。
高津宮の井戸掘りプロジェクトの方々は、他で井戸掘りをしたい方々へのアドバイスも惜しみませんとおっしゃっています。下記ホームーページ、ご参考まで。
https://www.koudubori.com/blank-3